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沖縄県の玉城デニー知事がスイス・ジュネーブで開かれた9月18日の国連人権理事会で演説し、米軍基地などを巡り日本政府の安全保障政策を批判した。
この中で玉城氏は、「(沖縄に)米軍基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている」と述べた。「軍事力の増強は日本の周辺地域の緊張を高めることが懸念される」とも語った。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設については「日本政府は貴重な海域を埋め立てて新基地建設を強行している」と訴えた。
いずれも看過できない内容である。自衛隊と在沖米軍は、沖縄県を含む日本の平和を守る重要な抑止力である。万が一の際には命がけで沖縄県民を含む国民を守る存在だ。
日本の知事の一人が海外へ足を運び、自衛隊や同盟国の軍の存在をあしざまに語るのは間違っている。自衛隊・米軍と県民を分断するような演説を喜ぶのは、対日攻撃の可能性を考える外国の政府と軍ではないか。
安全保障政策は国の専管事項だ。県民は国民として国政参政権が保障されている。玉城氏の批判は誤りだ。国が申請した辺野古移設工事の設計変更に対し、県はいまだに承認していない。工事を遅らせている責任の多くは玉城氏にある。
そもそも、力による現状変更を図り、地域の緊張を高めているのは中国だ。中国は沖縄の島である尖閣諸島(石垣市)周辺で対日挑発を繰り返している。その点に触れず、日本と米軍の批判に終始するとはどういう所存か。
玉城氏は21日も人権理の会合で「米軍基地の存在が県民の人権を侵害し、生活を圧迫し、平和を脅かしている」と演説する予定だった。会議時間の都合で実現しなかったのは幸いだったが、発言予定の原稿を明らかにした。人権侵害と決めつけるのは常軌を逸している。米軍基地で働く県民も大勢いる。その家族や子供がどう思うか。玉城氏には猛省を促したい。
辺野古移設工事を巡る国と県との訴訟で最高裁は県の主張を退ける判決を下した。最高裁の判断に従って玉城氏は急ぎ工事の変更申請を承認すべきだ。それが日本の法治、日本の平和、普天間飛行場周辺の県民の安全を守る道である。
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2023年9月23日付産経新聞【主張】を転載しています